『2/3の不在』

クラウス,ニコール【著】;坂本憲一【訳】アーティストハウスパブリッシャーズ;角川書店〔発売〕
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ひとりの男が、ラスヴェガス郊外のネヴァダ砂漠で発見される。所持していたカードから、男はサムソン・グリーン、36歳、コロンビア大学の英文学教授で、8日前から行方不明になっていたことが判明した。その後、病院で脳にサクランボ大の腫瘍があることが見つかり、手術の結果、サムソンの過去24年間の記憶は失われ、12歳までの記憶しか残らなかった…。ニューヨークの自宅に戻ったサムソンは、愛していたはずの妻、情熱を傾けてきた仕事、そして自身の人生、彼を取り巻く世界そのものから取り残されてしまった疎外感に苦しむ。そんな折り、レイ・マルコムと名乗る科学者から、ネヴァダ砂漠の研究所での脳医学実験に参加しないかと声をかけられる。ニューヨークでの孤独な生活から逃れ、だれも自分を知らない地での新生活に賭けようとするサムソンとは対照的に、妻アンナは、自分の愛した夫がもう二度と戻らないのではないかと危惧を強めてゆく。人は愛の記憶なしに、だれかを愛することができるのだろうか?空白の記憶をかかえた男の絶望と再生をとぎすまされた文体で描く、米文学界期待の大型新人のデビュー小説。
 『スキップ』みたい。著者は女性、主人公は男性。