『江戸時代における機械論的身体観の受容』

フレデリック,クレインス【著】(京都)臨川書店
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文政年間までに蘭学者たちによって利用されたオランダ語医学書の多くは、人間の身体が神によって創造された機械であるという思想的基盤をもっていた。この思想的基礎をもっていなかった蘭学者たちにとって、これらのオランダ語医学書の内容、とりわけ生理学や宗教、思想の内容は理解しがたいものであったはずである。本書は、宇田川玄真とその弟子坪井信道という二人の蘭学者がこのような西洋の機械論的身体観をどのように理解したかを、日本側資料とその典拠であるオランダ語医学書との実証的比較分析を通じて解明しようとしている。本書は二部からなる。第一部「宇田川玄真の神経観」では、宇田川玄真が著した西洋医学の教科書『医範提綱』における神経に関する知識・思想がどのように形成されたかを論証する。第二部「ブールハーフェ医学思想の受容」では、当時西洋で発展していた新科学の知識を医学に応用しようとしたライデン大学医学教授ブールハーフェの病理論が坪井信道によっていかに認識され受容されたかを論じる。
第1部 宇田川玄真の神経観(『医範提綱』の典拠;「遠西医範」の典拠と脳・神経の記述;『医範提綱内象銅版図』の原図;『医範提綱』の内容と脳・神経思想の変容);第2部 ブールハーフェ医学思想の受容(坪井信道訳「万病治準」における病理論;マルピーギの受精卵観察と坪井信道;ブールハーフェの機械論思想と坪井信道)
フレデリック,クレインス:1970年ベルギー生まれ。1993年ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)文学部日本学科licenciaat課程修了。2003年人間・環境学博士(京都大学)。現在、国際日本文化研究センター研究部助手