『東国科学散歩』

西条敏美【著】裳華房
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自然科学の各分野で業績を挙げた科学者は、どのような風土のもとに育ち、その土地土地に現在どのような痕跡をとどめているのであろうか。生家がまだ残っていたり、銅像や記念碑が立っていることがある。墓には業績を刻んだ墓碑が立てられていることもある。そうした科学者のゆかりの地を実際に散策すると、その科学者を身近に感じることができ、科学そのものの理解を深めることができる。このことは言い換えると、科学が生まれてきた背景を知るということでもある。科学もまた人間が創造した知的文化のひとつであり、文学や芸術などと同様に科学の文化を楽しむことができる。そんな思いから、その土地の科学者ゆかりの地をぶらり散歩することが、いつのころからか趣味になってしまった。本書は、そのおりおりに綴った紀行文である。収めた写真の多くは、著者が現地で撮ったものである。記念碑などに刻まれた碑文も囲みの形で採録し、その科学者の業績なども簡単に書き記した。
全身麻酔による乳癌手術―華岡青洲(和歌山・那賀);粘菌研究の大博物学者―南方熊楠(和歌山・田辺/白浜);電波天文学のパイオニア―畑中武夫(和歌山・新宮);星を見る鉄砲鍛冶―国友一貫斎(滋賀・長浜);地球を愛した創意の旅人―西堀栄三郎(滋賀・湖東);『草木図説』の編纂―飯沼慾斎(岐阜・大垣);世界最初の地震学教授―関谷清景(岐阜・大垣);苦学の蘭学者―坪井信道(岐阜・揖斐川);日本植物学の父―伊藤圭介(愛知・名古屋);明治期の化学技術の確立に貢献―宇都宮三郎(愛知・名古屋/豊田)〔ほか〕