『日本博物館成立史―博覧会から博物館へ』

椎名仙卓【著】雄山閣
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わが国では、明治の近代社会が成立するにあたって、西洋文明を摂取することによって、殖産興業政策を推進するために、わが国なりに咀嚼して、まず博物館を創設してから、そこで博覧会を開くことにより、新時代に即した見るもの、見せるもの、の発達を促している。しかし、現実問題としては、わが国では博物館が設置される前に博覧会が開催されており、そこから博物館が誕生するという過程をたどっている。従って、わが国では「博覧会」と「博物館」は別々に発展するものではなく、両者とも、見せるもの、見るもの、そして両々相俟って発達してきた。本書の目的は、こうした博覧会と博物館の相互関係を追い求めることにある。最初にその基盤となる概念を把握し、次に当時の社会背景などを考えながら、話題性の多い出品資料、登場した人物などに焦点をしぼり、わが国における草創期の博物館が果たした社会教育史的な役割などを考えてみたいと思う。最後に博物館を背景にした事件を追いながら、博物館の存在価値と今日の博物館に与えた影響なども振り返ってみたい。
第1章 博覧会・博物館の概念(「博覧会」という言葉;「博物館」という言葉);第2章 わが国における博覧会と博物館の接点(博物館を構想して博覧会が生まれる;古器旧物保存方の献言と布告 ほか);第3章 わが国における最初の官設博覧会(博覧会開催の趣旨;博覧会に出品された資料 ほか);第4章 わが国における博物館の成立(文部省博物館の誕生;博覧会事務局から博物館へ ほか);第5章 博物館における事件簿(文部省博物館での古金紛失;洋行帰りの金鯱伊豆沖で遭難か ほか)