『ベビュカン―あるいは奇蹟のディレッタントたち』

zabon2003-12-19

アインシュタイン,カール【著】;鈴木芳子【訳・解説】未知谷
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あらゆる愚者の心を奪う完璧な調和を目論むダダの旗手C.アインシュタイン表現主義からダダ・シュールへと向かう結節点と位置付けられる頭脳小説。ベビュカンとは主人公の名前である。内省的なベビュカンの内・外に起こる目眩めく世界を多面的複眼的に描いた正に現代の知性の書。120頁の掌篇ながら19の章に分けられ、ロマン主義や象徴派といった芸術論、プラトン主義やカント批判といった哲学論が交わされる一方、鏡にまつわる事件を契機にアメリカのホラー映画さながら、町中に殺戮行為が蔓延する。2000年にはドイツでリロ・マンゲルスドルフ監督によって映画化された。1912年初出のキュビズム小説。
アインシュタイン,カール:1885年ノイヴィート生まれ、ユダヤ系。ベルリンで美術史・哲学を学び、小説家・美術史家・批評家として活躍。スパルタクス団蜂起の際にはバリケードに立つ。1928年パリに移住。1936年スペイン市民戦争に反ファシズムの闘士として参戦。1940年ドイツ軍によるフランス占領後、ゲシュタポの手に渡されるのを拒み、ポー川に投身自殺。『黒人彫刻』『二十世紀の芸術』はモダニズム芸術の基本書として高く評価されている。