『アマチャ・ズルチャ―柴刈天神前風土記』

ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション 深堀骨【著】早川書房
bk1/amazon.co.jp】1,700
その街では、謎の奇病「バフ熱」に冒された男が食用洗濯鋏に余生を捧げ、「蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼」の三面記事ほどに陳腐な溜め息を吐くコインロッカーがあった。しかしときには、加藤剛をこよなく愛する諜報員が「隠密行動」を展開し、国際謀略に巻き込まれた茸学の権威「若松岩松教授のかくも驚くべき冒険」が繰り広げられる街。謎の物体「飛び小母さん」が目撃者たちの人生にささやかな足跡を残し、とある人妻とマンホールが哀しき「愛の陥穽」に堕ちたのもまた、この街の片隅だった。あるいはまた、「トップレス獅子舞考」が試みられた風俗発祥の地、江戸幕府を揺るがした「闇鍋奉行」暗躍で歴史に刻まれる街―そう、柴刈天神前。このありふれた街と人に注がれた真摯な眼差しと洞察をもとに、現代文学から隔絶した孤高の筆が踊り叫ぶ、愛と浪漫と奇蹟の8篇。
バフ熱;蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼;隠密行動;若松岩松教授のかくも驚くべき冒険;飛び小母さん;愛の陥穽;トップレス獅子舞考;闇鍋奉行
深堀骨(フカボリホネ):1966年生まれ。1992年、生涯初の創作「蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼」が都筑道夫小池真理子両氏の絶賛を浴び、第3回ハヤカワ・ミステリ・コンテストに佳作入選。以来『ミステリマガジン』『SFマガジン』で中短篇を発表