『イリヤの空、UFOの夏』

 読み終わったので、メモ程度に。
 読んでいてちっとも楽しくなかった。それは、まあ、戦争を扱った重苦しい話だから、とかいう理由では当然なくて、「この先どうなるんだろう」的なわくわく感がまるでなかったからだと思う。解りやすくて、予想通りの展開に落ちてしまったのが不満なのかと言うと、そうではなくて。
 語弊があるかもしれないけれども、この小説には伏線(あるいは行間)というものがないような気がする。世界は、書かれている限りで全て、であるような。隅々まで説明してあって、それ以外のものがないような。小説というものが、文章というメディアを介して、作者と読者が世界を共有するための道具であるとするならば、秋山瑞人はすごくいい書き手、なのかもしれない。
 私が、ライトノベルを普段読みなれていないせいもあるかもしれない。わかりやすくあれ、という要求は、恐らく一般的な小説(って何だ)よりも高いだろうから、そういうものなのかもしれない。全編にわたる漫画的な過剰さや、頻繁に回想シーンが入る文法に違和感を感じてしまうのも、単に私が慣れていないせいかもしれない。漫画だったら、同じものでも受け入れられる気がする(そんなことはありえないのだが)。
 あと、エピローグの手紙。彼氏に黙って浮気しちゃったんだけれども、秘密にしとくのがしんどくなって、「一時の気の迷いだったの。正直に話すから許して」みたいなもんじゃないですか、これ(--;。浅羽に対してはもちろん、読者にとっても、とても嫌らしい(気持ちはわかるが)。と同時に、わかっていることの説明をくどくど聞かされるような面倒くささがあって、この説明過剰さを受け入れられるか否か、が私にとっては問題だったなあ。
 ストーリーラインは好みなので、特に文句はないだけに、もうちょっと恥じらいをもって書いて〜とか思ってしまった。中高校生の頃ならはまっていたかもなあ。
 ちなみに、ラストシーンに何らかの不満が残ることが、後世に残るような名作になる条件だ、というようなことを、週末『プリンセスチュチュ』全話一気鑑賞をしてみて実感したんだけど、これはこれでよしかな。