『感謝されない医者―ある凍傷Dr.のモノローグ』

金田正樹【著】山と溪谷社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4635140075/zabon-22/ref=nosim/
二百名までは記述記録していたが、もううんざりして記録していない。凍傷患者のうち、外科的処置(切断術)を行ったのは全体の四割と思われる。正確ではないが、三百人の手足の指を切ったことになる。手術した患者から感謝されたことはきわめて少ない。それはそうだろう。指を切り落とされて「ありがとうございました」でもないからだ。凍傷で壊死した指を切る医者のやるせなさ。「もっと自分の手足を大事にしろよ」800例の凍傷患者を診た臨床医の切実な言葉だった。本書は、患者の心理に言及しながら、凍傷の最近の治療法まで綴った、「感謝されない医者」の独白である。
1 診療依頼;2 初めての凍傷例;3 凍傷患者騒動記;4 剱沢SOS;5 切断;6 忘れえぬ患者;7 凍傷の病態;8 山に想う
金田正樹:1946年、秋田県生まれ。1971年、岩手医科大学卒業。整形外科医として、秋田大学整形外科、関東逓信病院聖マリアンナ医科大学東横病院を経て、現在、向島リハビリクリニックセンター長。登山は高校時代からはじめ、1969年、西部ヒンズークシュ無名峰初登頂、70年、中部ヒンズークシュ無名峰初登頂などの記録を持ち、73年、第2次RCCエベレスト登山隊にドクターとして参加。海外の災害救援も、85年のメキシコ地震、90年のアフガン紛争、91年の湾岸戦争、96年のバングラデシュ竜巻災害、02年イラク戦争などの医療支援に当たる。NPO災害人道医療支援会理事