『小熊秀雄童話集』

zabon2006-02-15

小熊秀雄【著】清流出版
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 白い皿の上にのつた焼かれた秋刀魚(さんま)は、たまらなく海が恋しくなりました。
 あのひろびろと拡がつた水面に、たくさんの同類たちと、さまざまの愉快なあそびをしたことを思ひ出しました、いつか水底の海草のしげみに発見(みつけ)てをいた、それはきれいな紅色の珊瑚は、あの頃は小さかつたけれども、いまではかなり伸びてゐるだらう、それとも誰か他の魚に発見(みつ)けられてしまつたかもしれない、などと焼かれた秋刀魚は、なつかしい海の生活を思ひ出して、皿の上でさめざめと泣いて居りました。

珠を失くした牛;狼と樫の木;豚と青大将;たばこの好きな漁師;白い鰈の話;焼かれた魚;青い小父さんと魚;お月さまと馬賊;緋牡丹姫;お嫁さんの自画像;三人の騎士;親不孝なイソクツキ;マナイタの化けた話;タマネギになったお話;鶏のお婆さん;トロちゃんと爪切鋏;ある手品師の話;ある夫婦牛の話
小熊秀雄:1901(明治34)年、北海道小樽市生まれ。幼少時に稚内樺太へと移住。養鶏場番人、炭焼手伝い、鰊漁場労働、職工、伐木人夫、呉服店員などさまざまな職業につく。やがて文才を認められ、1922(大正11)年に旭川新聞社の社会部記者となる。以後文芸欄を担当し、詩、童話、前衛的な美術作品などを発表する。1935(昭和10)年に『小熊秀雄詩集』、長篇叙事詩集『飛ぶ橇』を出版、言論弾圧のきびしいなかで、精力的に作品を発表するも、生活は困窮した。洋画家の寺田政明との交友を通じ、油彩やデッサンを描き、美術批評の分野にも進出。1940(昭和15)年、軍国主義が進行し、急速に発表紙誌を失いつつあるなか、貧困のうち肺結核のために三十九歳で死去
 『焼かれた魚』id:zabon:20060201#p6で気になっていた人の童話集。北村薫のアンソロジーでも紹介されているようだ。へえ。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000124/files/655.html
 青空文庫でも読める。

小熊秀雄童話集
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小熊 秀雄
清流出版 (2006/02)
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小熊 秀雄
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焼かれた魚―The Grilled Fish
小熊 秀雄 Arthur Binard アーサー ビナード 市川 曜子
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謎のギャラリー―こわい部屋
北村 薫
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