『幻想の東洋―オリエンタリズムの系譜』

彌永信美【著】ちくま学芸文庫 筑摩書房
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西欧は東洋をどのように表象してきたのだろうか。とりわけエドワード・サイードによる問題提起以降、“オリエンタリズム”は最もアクチュアルな思想的主題のひとつである。本書もまた、西欧の東洋に対する知と支配の様式、そのイデオロギー性を批判するというモチーフをサイードと共有するが、時間的・空間的射程ははるかに長く、博捜はいっそう徹底的である。本巻には、古代異教世界の歴史意識に始まり、ユダヤキリスト教の普遍主義・終末論・政治神学、さらには使徒トマス伝説・祭司ヨーハンネース伝説など中世的想像力の諸相に及ぶ、第10章までを収録する。1987年度渋沢=クローデル賞受賞作。
序 旅への誘い;1 最古の民・最果ての怪異;2 遍歴する賢者たち;3 秘教の解釈学;4 隠喩としての歴史;5 世の終りと帝国の興り;6 東の黎明・西の夕映え;7 終末のエルサレム;8 楽園の地理・インドの地理;9 秘境のキリスト教インド帝国;10 ―そして大海へ…
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大航海時代ルネサンス宗教改革といった近代の転換期のなかで、東洋はさらに“発見”されていく。本巻では、コロンブスサヴォナローラ、ザビエル、ポステルらに照明をあて、西欧による一元的世界認識の深化を跡づける。オウム真理教事件9・11以後の世界を考えるうえで示唆に富む付論「近代世界と「東洋/西洋」世界観」を収録。「“西欧文化”を批判するために、たとえば“東洋”的価値に依拠しようとすること自体が、それこそ“オリエンタリズム”の典型である、ということを言うためにこの本を書いた…」。オリエンタリズム批判を単なる知的意匠にとどめないための論理と倫理を展望する真の野心作。1987年度渋沢=クローデル賞受賞。
11 新世界の楽園;12 反キリストの星;13 追放の夜・法悦の夜;14 東洋の使徒と「理性的日本」の発見;15 天使教皇の夢;16 アレゴリーとしての「ジアパン島」;エピローグ 二つの「理性」と一つの真理;付論 “近代”世界と「東洋/西洋」世界観
彌永信美:1948年生まれ。仏教学者、評論家。パリ高等研究院歴史・文献学科中退。仏教神話の伝承史的研究に加え、ヨーロッパ文化史・宗教史・神秘思想の該博な知見を生かした広範な評論活動を展開中。『幻想の東洋―オリエンタリズムの系譜』(1987年度渋沢=クローデル賞受賞)のほか、著書に『歴史という牢獄』、『大黒天変相』、『観音変容譚』が、訳書にヴァン・ジュネップ『通過儀礼』(秋山さと子氏と共訳)などがある