『白檀の刑〈上/下〉』

莫言【著】;吉田富夫【訳】中央公論新社
上【bk1/amazon.co.jp】/下【bk1/amazon.co.jp】各2,800
上:猫の哭き声天地に満つるとき大清帝国の礎が揺らぐ。ニャオニャオニャオ―。生は血の叫喚にむせぶ。想い浮かぶは孫家の眉娘の花のかんばせ、瞳は秋のさざ波か、紅唇皓歯のあでやかさ。水を得た魚のごとくからみ合い、裁きの部屋でまで情けを交わしたこの二人。第1回鼎鈞文学賞受賞。
下:首席処刑人が誇りをかけて一代の英雄に準備した古今未曾有の大極刑。死は白檀の香りに沈む。天空を望めば金風薫り、大地を見れば草木は茂る。われはもと英霊の転生、義旗を掲げて正義を行わん。わが中華の江山を守り、毛唐めらの鉄道敷設を許さじ。いましも食す山海の珍味、さらに飲む芳醇なる玉液。ニャオニャオニャオ―。第1回鼎鈞文学賞受賞。
莫言:1955年、山東省高密県に農民の子として生まれる。幼くして文革に遭い、小学校を中退。兄の教科書や旧小説で文学に目覚める。76年に人民解放軍に入隊。85年に『透明な赤蕪』でデビュー。翌86年、『赤いコーリャン』(張芸謀監督により映画化。88年、ベルリン映画祭グランプリ)で、倫理を超える農民の生命力を描いて、中国のマルケスと呼ばれる。以後、『天堂ニンニクの芽騒動』『酒国』『豊乳肥臀』『至福のとき』など、多作な作家として文壇の最先端を行き、現代中国でもっともノーベル文学賞にちかい作家といわれる。『白檀の刑』で第1回鼎鈞文学賞受賞