『まぼろし綺譚』

今日泊亜蘭【著】出版芸術社
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今日泊亜蘭は、まだ日本に本格的なSF作家がいなかった昭和37年、壮大なスケールの傑作長篇「光の塔」を発表した日本SFの先駆者である。その独創的な作品群はSFファンのみならず幻想小説の分野からも高い評価を受けている。本書は、奇想天外な方法で連続殺人を犯す怪人と刑事との息詰まる攻防を描いたSFミステリ「死を蒔く男」、昭和33年の直木賞候補となった風刺劇「河太郎帰化」、著者独自の世界を形成する和風ファンタジーの傑作「滝川鐘音無」「新版黄鳥墳」など、まぼろしの彼方から甦った珠玉の名品12篇を一挙に収録。
夜走曲;くすり指;死を蒔く男;東京湾地下街;見張りは終った;確率空中戦;みどりの星;御国の四方を;河太郎帰化;滝川鐘音無;新版黄鳥墳;玉手箱のなかみ
今日泊亜蘭(キョウドマリアラン):1912(大正元)年、東京都に生まれる。上智大学国語学部、アテネ・フランセなどで諸外国語を学ぶ。アテネ・フランセ時代の同窓生には後に作家となる日影丈吉がいた。戦後は米軍の通訳を務めた後、「文芸首都」「歴程」の同人となり作家活動に入る。57年、探偵作家によるSF同人グループ“おめがクラブ”に参加、翌年には日本初のアマチュアSF同人グループ「宇宙塵」に客員待遇で招かれて参加。62年、同誌に発表した侵略テーマの長篇『刈り得ざる種』を加筆改題し『光の塔』として出版。日本人作家によるSF長篇の第一号であった。以後、寡作ながら質の高い作品を次々と発表。91年、『光の塔』の続編に当たる大長篇SF『我が月は緑』を刊行。その後は、言語学の研究に没頭し、創作は発表していない